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カメラマンの僕。

この夏、僕たちは旅に出た。

旅といっても、遠出するのではない。

鹿児島市内を通る路面電車に乗って、各駅停車の旅。

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最初に向かったのは、市電の起点と言える谷山電停。

僕らの住む鹿児島の町探検は、ここから始まった。

鹿児島の人たちにはお馴染みかもしれないけれど、ここは、日本最南端の電停らしい。

初めて降り立ったわけではないけれど、改めて見返してみるといろんな発見があるものだ。

ふむふむ。なるほど。

僕は、資料として、写真を撮った。

もちろん、大事なことは、しっかりメモもとった。

やはり、情報は足でかせがなくちゃね。

現在、鹿児島市内の電停は35個以上あるけれど、
創業当時は8個しかなくて、全長も今と比べ物にならないくらい短かったということも知った。

谷山駅から武之橋。

つまりこの谷山駅は今から109年前から、玄関口として機能していたってことか。

すごいなーと興奮していると、近くにもっと興奮している人がいた。

 

 

・・・・母だ。

「おーい!こっち!見て!コーマルーーー!!!」

おいおいおい。。。母上、僕はここにいるじゃないか。
そんなに大きな声で呼ばなくても、大丈夫だって。

40年以上鹿児島に住んでいて、この谷山電停も何度も利用しているというのに、
やたらと写真を撮っている。

さらにあろうことか、駅前で動画撮影まで始めたではあるまいか。

「コーマルー!お願いがあるんだけど・・・あのさ、ちょっとだけ撮影してもらっていい?!自撮りだと限界があって・・」

・・・おいおい、勘弁してくれ。

僕は恥ずかしさのあまり、母から離れて他人のふりをしようと思ったが、

サロンのみんなにさ、ここからお届けしたいのー!この時期どこにも行けないし、ちょっとだけでも鹿児島に旅行した気分を味わってもらえるんじゃないかって思ってさ!」

母はびっくりするほど笑ってた。

「あー!なるほど!いいですねー!」

僕は反射的に、とても明るく前向きに快諾していた。

だって・・・そんなこと言われたら断れないじゃないか。

母がサロンの皆さんを大好きだということも知っているし、サロンの皆さんにパワーをもらっているということも知ってる。

「あまり大きな声出さないでくださいよー!3、2、1、はい、回ったー!」

 

 

「みんな〜!元気ー?!今日は谷山駅にやってきました〜!!!」

 

・・・・(°▽°)💧

あれだけ小さな声でってお願いしたのに・・・。

たった1分。されど1分。

「よくあんなにリポートできますね。恥ずかしくないんですか?」

撮影を終えた後、思わず言わずにはいられなかった。

「うん!こういう仕事してるからねぇ〜!カメラマンしてくれて、ありがとうーー!声、大丈夫だった?小さくなかった?」

 

・・・(°▽°)声は十分大きかったですけど。

すごい。。。母の言葉にも驚きだけど、こうやって、いつも母のリポートを撮影してくれるカメラマンさんやディレクターさんの凄さを思い知った。

技術だけじゃなくて、気持ちの上でも尊敬する。

とにかく、母は楽しそうだった。

母と僕の、ひと夏の電車旅。
こうやって二人で出かけることもそう多くはないだろう。

「想像していた以上に電車旅、楽しいですね。」

僕が呟くと、母はもっと喜んで嬉しそうにしていた。

「え?なんて?もう一回言って〜!!!」

こんなに暑いのに、体を寄せてくる。

「もう言わない。聞こえてるくせにー。」

母の言葉を軽くあしらって、

僕は、次の目的地に向かう準備を整えた。

【2021年8月6日 「カメラマンの僕。」より】

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