成績よりも大切なもの。

岡本安代

3年前

涙がでた。
久しぶりに教え子と再会した。

１ヶ月ほど前、20年ぶりに連絡に連絡をもらった。

「鹿児島帰ります。会えますか？」

その昔、家庭教師をしていた女の子からだった。
当時、私は女子大生で、その子は高校生。

教え子というには、恥ずかしい。

教師と生徒と言うより、ほぼ同世代の私たち。

教科は問わず、週に１回、２時間。
克服すべき課題に向き合った。

あれから20年。

あまりにも長すぎる時間に、再会を果たすまでは、正直ドキドキしていた。

「おー！久しぶり！」

「お久しぶりですー！」

嘘みたいに、あの頃と同じ空気だった。

ドキドキは、杞憂に過ぎなかった。

会った瞬間、二人の間の20年という時間は一瞬にして消えて無くなった。

いろんな話をした。
この20年、何があったかを。

そして今、何をしているのかを。
実はあの頃、何を思っていたかを。

鹿児島を出て大学を卒業したあと、今は福岡でバリバリ働いているということ。
仕事が楽しくて仕方がないということ。

そして絶賛婚活中だということ。（←ここ重要らしい。笑）

「安代さん、テレビ出てたでしょー！

深イイ話、見たよー！

変わってないなーって思った！！！熱くて、涙もろくて。

歌って踊ってるとこも（笑）。

いや、むしろ落ち着いた（笑）？」

話は尽きなかった。彼女は底抜けに元気だった。明るかった。

あの頃と何にも変わらない。とても素敵な女の子だった。

「実は、あの頃は、家庭教師、やめたくて仕方なかったんだー。
親にもやめたいよーって言ってたもん！（笑）でも、続けなさい！って言われてて。」

え？そうなの？( ﾟ ▽ ﾟ 😉←ショックが隠せない。

「いや、とにかく勉強が好きじゃなかったのー！(￣▽￣)」

それなのに、よう続いたね。3年間も。

そもそも成績、悪くなかったよね。いや、むしろ、良かったような。。。

「覚えてます？ずーっと勉強教えてもらってたけど、いつだっけな〜？

初めて安代さんに相談した時があって。私、安代さんの前で泣いちゃったんだよねー。」

うんうん、相談してくれたってことは覚えてる。

「あの時さー、安代さんも超泣きながら、話聞いてくれて。しかも結構、安代さん、泣いててさ。（笑）え？マジ？！他人のことでこんなに泣ける人、初めて会ったわ（笑）と衝撃だったんだよなー。」

え？私も泣いてた？（←記憶なし。）

「あれがきっかけで、私、安代さんに心を開けるようになった気がする。いろいろ相談に乗ってもらったり。あの頃、私は絶賛思春期真っ只中だったから。家で甘えられるような時期でもないし、長女だったし。だから安代さんの存在はお姉さんみたいで。なんでも話せたし、すごくありがたかった！」

そうだったんだー！そう言ってもらえると救われる。
だって、やはり家庭教師たるや、成績上げることが一番求められるでしょ？
だから、話するより、まず勉強！みたいな。

「大丈夫！

成績ももちろん上がったから（笑）

でも、成績よりも、当時の私がとても救われたってことが大事！！

だから、我が子に家庭教師つけてるけど、成績が上がらない！と嘆いている人に会うと

『もしかしたら、家庭教師は、成績を上げるためだけではなくて、人間形成に必要不可欠な、その子にとっての話し相手とか、相談相手とか、ストレス発散とか、そんな役割も担ってるかもしれませんよ！それを含めての投資と考えると無駄じゃないです！』って言い回ってる（笑）！だって、学力向上より、心の成長の方が、よっぽど大切なことだと思うし、ね！！！」

彼女は笑っていた。

とても清々しい表情で。そして、とても澄んだ優しい目をしていた。

「今だから、安代さんに会いたかったんだ！
10年前とかでも、5年前とかでもなく、今だから。
だって、今、仕事もとても楽しくて、とてもハッピーだもの！あ、あと旦那さんも探しているから、誰かいい人いたら、よろしくお願いします！（笑）」

つい成果を求めてしまいがちの世の中だからこそ、母となり、家庭に生きる私に、

20年の時を経て、本当に大切なことは何かを改めて気づかせてくれるために
彼女はやってきてくれたのではなかろうか。

そんな気がした。

そして、もしかして、彼女の親御さんは、全てを分かっていたからこそ、
彼女に家庭教師を続けるように、言ったのかもしれない。