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汁物、美味し。

番組のオンエアを終えて家に帰ると末っ子コーマルが、
一生懸命ご飯を作ってくれていた。

母は驚いた。

『ママがお仕事を頑張ってるから、コーはご飯をちゅくるから!』と言う。

『ママはあっち行ってて!ひとりでしゅるから!』

母は言われるがまま、あっちへ行った。
↑実はこの行為こそ、子供が小さければ小さいほど勇気がいる。

しばらくして、『できたよー!』と声が聞こえる。

 

…え?問い合わせ、何もなかったけど?
全部自分で?作ったわけ?

恐る恐る、台所に行ってみた。

彼はしたり顔で待っていた。
彼の指す方向には、完成した、彼の作ったお吸い物がお椀に用意されていた。

沸騰したお湯に、人参を切って、昆布を入れて、煮立てたあとに、醤油を入れて、完成させたらしい。

言葉を選ばずに言うとすれば、

いわゆる母のモノマネであり、それはつまり、
リアルおままごとだ。

出汁をとろうという努力に、思わずニンマリしてしまう。

『美味しいよ!食べてみて!』と母にすすめながら、ほぼ、自分が食べていた。

息子に誘われるがまま、母も早速頂く。

昆布の風味は素晴らしかった。
が、味は、ほぼお湯だった衝撃。

しかし、自分で作った味はどうやら格別らしい。

満足そうに、笑っていた。

美味しいでしょ!と言わんばかりの笑顔だった。

母が手直しするでもなく、彼は、すぐさま家族全員分を配膳し、結局、兄弟みんなが出汁のきいた、ほぼお湯のお吸い物に舌鼓を打った。

『これ、コーがひとりで?すごいじゃん!』
長女カンちゃんに褒められてご満悦のコーマル。

もはやお湯の吸い物を、称えながら美味しくいただく兄弟の姿。
…泣けてくる。(T . T)

『おかわり、しゅる?』という台所ミニ番長の声かけを背中で確認しながら、
母は次のロケ先に向かった。

『ママー!行ってらっしゃーい!』

みんなおかわり、したのだろうか?←かなり気になる。

そんな思いを抱きながら、次の現場へ。

スタッフさんとの楽しいトークに身を委ねながら、濃厚なロケタイム。

夕方、足早に帰宅すると、
長女カンちゃんが、台所に立っていた。

『コーマルのスープ、リメイクしようかと思って。』

中の具材を取り出して、作り直していた。

さすが、長女。

『これさー、人参とセロリが入ってるんですよねー、こうなると、玉ねぎ入れて、コンソメ入れたくなるけど、残念ながら、コンソメがないんですよ。お味噌汁にしますけど、いいです?』

も、も、もちろん!

『あら?これから少年団ですよね?いいですよ!行ってきてください!』

あ、あ、ありがとう。

このところ、母のばたばたな毎日に、長女は、ますます何かを悟り始めた気がする。

娘に見送られて、少年団へ向かう母。
↑そういえばアタシったら、育成会長( ̄▽ ̄)

息子の練習を横目に、事務作業に精を出す。

練習後は慌てて家へ。毎日がフルスロットル。

帰宅すると、玄関までお味噌汁のいい香りが漂っていた。

弟からバトンを引き継いだ、あのお味噌汁だ。

嗚呼、汁物、美味し。

【2015年4月27日 「汁物、美味し。」より】

 

 

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