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2020年4月15日水曜日、午前6時過ぎ。
台所にはいたのは長男タイ兄だった。
腰の据え方がすでに5年目の貫禄を醸し出している。
彼は特に寝起きがいいわけではない。
しかし、弁当番長の日だけは、強い睡魔に果敢に立ち向かう。
この日も例外ではなかった。
テーマはタマネギ。
このテーマを耳にした瞬間、彼の目指す場所は決まっていた。
もはやタイ兄貴の作るお弁当で、最頻出項目と言ってもいいのではなかろうか。
意気揚々と、持ち場についたはずのタイ兄だったが・・・
いざタマネギに向き合うと様相は一変した。
彼は・・・・
泣いていた。
正確に言うと、タマネギに、泣かされていた。
かれこれ10年以上この光景を目にしてきたが
彼は、決してチョッパーやフードプロセッサーのような道具を使おうとはしない。
さらには冷蔵庫に入れたり、レンジで加熱したり、世の中でよく言われる「タマネギを切るときに目が痛くならない方法」を試してみると、若干は収まることを実感したこともあるらしいが、それでも、ありのままのタマネギに挑む。
曰く「タマネギに、負けた気がする。」らしい。
・・・・そうか。悪くないだろう。
想像もしないこだわりが、(こだわりと言うのか?)
きっと彼を勝利へと導くに違いない。
ならば、見届けようではあるまいか。
大量に切った玉ねぎを、じっくりゆっくり炒めていく。
「っくぅ〜!目が痛いっ〜!玉ねぎ、すげーわ。」
炒めていても、目が痛いらしい。
タマネギの威力に必死に応戦するタイ兄。
「よし!粗熱をとって・・・ミンチと混ぜるぞ!」
そう。彼が目指すは、ハンバーーーーグ!
長女カンちゃんがお弁当で最も大好きだと言っていたこともある、お弁当定番メニュー。
まもなく巣立つ長女カンちゃんが喜ぶメニューを兄弟全員が攻め続けているのだ。
(現在長女はコロナにより出発延期中)
「あら?パン粉、どこあります?」
__あれ?ないね・・・あ、そうだ!昨日みーたんがオニオンリングで使い切りますって言ってたっけ?!ごめん!パン粉ないわ・・・。
「はぁーーー?!マジかーーーー!!!」
「しかもタマネギ、めっちゃ水分出して来るんですけど〜っ( ̄▽ ̄)!」
’トロトロ’という表現が的確かどうかは分からないが、
ミンチ肉・タマネギ・卵・ケチャップ等々が合体した
とてもゆるいハンバーグのタネがボールを占拠していた。
タイ兄の心中は穏やかではなかったに違いない。
言葉に出さずとも、その心情がオーラとして滲み出ていた。
「よし!このまま焼いてみる!」
ジュワーーー!!!
まずは第1投。
柔らかなハンバーグのタネを熱したフライパンへ。
__そうそう。動かさない。動かさない!ジューっと焼き付ける!まずは表面を固めて全てを閉じ込めよう!!!
よし!よし!いい感じだぞ。
そして、蓋をして蒸し焼きだ!
いよいよ出発時間が押し迫る。
進捗が気になる次男セーマンがご飯を詰めにやってきた。
「セーマン!出来たぞーーーー!」
差し出した手元には、しっかりした形状で、お弁当箱に鎮座するハンバーグの姿が!!!
ゆるゆるのハンバーグのタネからは
想像も出来ないほど、見事なハンバーグが完成していた。
中学生チームが所属する第1陣が完成するまで、およそ40分。
しかし、家族7人分となると、そうはいかない。
ひたすら焼き続け・・・
1時間以上かけてようやっと完成した。
長男特製ハンバーグ弁当!
ドーーーーーーン!
一口食べた瞬間、長女カンちゃんは言った。
「タイ兄、だいぶ・・・
腕上げたねぇーーーー!!!
今までで一番美味しいわ。
メチャクチャジューシー!柔らかいし、お肉食べてるって感じ!」
__そりゃよかった。めでたし。めでたし。よく考えたら、お肉とタマネギという混じりっ気なしのお肉密度高めのハンバーグだもの、ねぇ〜。むしろ贅沢なのかもしれない。
災い転じて福となりまくりのタイ兄のハンバーグ弁当。
大変よく出来ました。
週1弁当番長活動タイ兄編。
作ることに意義がある。
続けることに意味がある。
全ての食材に感謝。