大変だ!ソーセージがっ!
コーマルは焦っているようだった。
コーマル「ママーーー!!大変だ!!ソーセージが!!!」
・・・ソーセージが?!
(落とした?焦がした?一体どうした?)
コーマル「タコになりそうにない!!!!」
・・・・え?!( ̄□ ̄;)
ソーセージを二等分するところまでは出来たらしいが、
そのあと、どこにどう切り込みを入れるのかがわからなかったらしい・・・・
えーっとね。まあ、どっちでもいいかもしれないけど、ママは、平べったい切れ目の方を上にして、下の尖った方を足の方にしてるかな〜。そこに切れ目を入れて炒めたら、足みたいになるよ。
慌てふためく息子を落ち着かせよるように、母はなるべく穏やかな口調で話していた。
たかが切るだけ、されど切るだけ。
コーマル「ふーん!そうなんだ!」
母のアドバイスを受け、仕切り直しの料理戦士。
大好きなソーセージ。
切り込みが入っていようがいまいが、食べるには何の問題もない。
何も気にせず、きっと美味しく食べていたに違いないのだ。
ただ、自分が調理をするとなると、話は別。
知っているつもりでも、知らないことが多い現実、なかなか前に進まない。
いつものコーマルならソーセージは斜め切り。
いつもと切り方を変えるだけで、こんなにも大騒ぎになるとは。ヽ(゜▽、゜)ノ
全てがお祭りだった。
ソーセージの先端に切り込みを入れるという、とてつもなく序盤の工程にも関わらず、
まるでおせち料理を作るほどに神経を研ぎ澄ませる料理人コーマル。
しばらく台所には静寂が続いた。
ほどなくしてジューっと炒める音がする。
どうやら全てのソーセージに切り込みを入れて炒める工程に入ったらしい。
やがて、いい香りが漂ってきた。
お姉ちゃん!見て!
コーマル「よーーし!出来たー!美味しそうーーーー!」
おー!美味しそうだねー!いいにおーい!
母の元へ運ばれてきたソーセージは、しっかりと火が通り、
切り込みを入れたその先端は、タコ足のように、ちゃんと開いていた。
そこにちょうど帰宅した長女カンちゃん。
カンちゃん「おーーー!すごいじゃん!」
コーマル「足ができたんですよ!遠足のソーセージみたいでしょ!!!」
カンちゃん「本当だー!コーマル、もうお弁当作れるねー!!」
さすが、カンちゃん。全力の褒めっぷり。
やったぜ、コーマル。 全力の喜びっぷり。
これぞ、言葉のチカラ。
そもそも、ソーセージ炒めでこんなに喜びが待っているとは思わなかった。
だっていつもやってるんだもの。彼にとってなんのことはない。そう思っていた。
同じ料理なのに、同じじゃない。「切る」から、「切り込みを入れる」という変化。
日頃、台所で作業する中では、なかなか気が付かなかったであろう小さな変化。
その小さな変化は、きっといま目の前にいる料理番長にとって
大きな一歩だったに違いない。
コーマルは心なしかその表情に達成感を漂わせていた。
コーマル「さぁー!次は、なに作ろっかな〜!」
すごーーーーーーい!楽しみだーー!!!
意気揚々と持ち場に戻る小さな料理番長に、母と姉はいつもより声を張って喜び、
ニヤニヤしながら視線を見送るのだった。
(次へ続く)
【2018年7月31日 『切り込みを入れるって難しいのだ!』】