夕食後、兄弟みんなで会話していた。
それはとても何気ない会話で、みんなで笑ったりツッコミあったり、
それはとても楽しそうだった。
そんな会話をBGMに、母は編集をしていた。
ご飯は食べたはずなのに、小腹が空いた母は子供たちに乞うた。
「あのさー、芋けんび、食べたいんだけど、いい〜?」
母が子供たちにお願いした理由は、ただ一つ。
その芋けんぴは、子供たちのものだったから、お裾分けしてもらおうと思っていた。
「うわっ!きたっ!母上、結構、食べるからなー(°▽°)」
「カンねえちゃーん、母上が芋けんぴ食べたいって!どうしますー?!」
子供たちはみんな、母の食べ方の勢いが激しいことは折り込み済みだったため、
話し合いが始まった。
「母上、キリがないからなー。」
「この前も、気がついたら、めちゃくちゃ食べてましたしねー」
「ほんとそれ!ほとんど残ってなかったし!」
芋けんぴの行く末を占う、大切な会議だ。
すると、遠くからカンPの声がした。
「ええ?母上が芋けんぴを食べたいって?
そりゃ断れるわけないじゃーん。私にとって、命の恩人だからー。」
「はぁー?それを言ったら、みんないっしょだわ!
みんなにとっての命の恩人だわ!」
え?え?え?どういうこと?!命の恩人?!え?誰が?!
「母親は、命がけで産んでくれたってことは、命の恩人ってことでしょ〜!」
・・・・んな大袈裟なっ!(°▽°)!
とはいえ・・・・なるほど、そうか・・・。
そうこうしているうちに、目の前には芋けんぴが運ばれてきた。
・・・・なんか、悪いねぇ〜。。。
「はい、どうぞ。芋けんぴです!」
あ、ありがとう。そう言いながら、芋けんぴを口にふくむと、
ちょうどいい塩梅の、ほのかな甘みが口の中に広がった。
「うーん、やっぱり美味しいわ。ありがとう〜」
もちろん、母は控えめに頂きながら、みんなで芋けんぴをを味わった夜。
母の心は、芋けんぴの美味しさよりも、母親は命の恩人と認識してくれていることに、
驚きと喜びと照れ臭さと、いろんな思いが押し寄せて、
今この瞬間の会話全てを刻んでおきたい衝動に駆られた夜。
そうか、母からみんな生まれてくる。
私も、私の母も、みんなみんな、命懸けで母親が命を産み落としてくれた。
全てのお母さんは、子供にとって命の恩人。
お母さん、私を産んでくれたありがとう。
お義母さん、村長を産んでくれてありがとう。
もちろん、父親の存在あってこそ、ですけどね。
子供たち、私を母にしてくれて、ありがとう。
やはり君たちは、偉大だ!
命の恩人って思ってくれているってことは、
生まれてきて、よかった!と思ってくれてるってことだと思うから、
それが一番、嬉しい。ありがとう。